前漢王朝の栄華の時代から衰退の時代にかけて、朝廷内の激しい権力闘争のなかを生き抜いた歴史のヒロインが王政君(おうせいくん)である。この作品は没落貴族の家に生まれ、一介の家人子(下級女官)から皇太子妃となり、さらに皇太后から太皇太后へ、そして太太皇太后にまでなった王政君が歩んだ波乱の生涯が描かれる。彼女が過ごした「後宮」は日本の大奥にも通じるところがあり、皇帝や皇太子の愛を巡り、巧妙な駆け引きや様々な陰謀が繰り広げられた。そこには女のしたたかさや繊細さ、嫉妬や哀しみが渦巻き、そうした心理や感情のあやを中国が誇る名女優たちがそれぞれ多彩な個性で演じている。
王政君役のユアン・リー、そのライバル傅瑤(ふよう)を演じたサン・イエホンら女優陣の美しさに加え、艶やかな衣装と、豪華セットや典雅なロケ撮影から成る映像も大きな見どころだ。監督は海外映画祭での受賞経験も多い名匠・ホアン・ジェンチョン。物語の語り口はドラマチックにして流麗。ヒロインの王政君に次々に降りかかる苦難と、その顛末から目が離せない。