Q:「大明帝国 朱元璋」をご覧になった感想はいかがでしたか?
前田:作品を手がけられている馮小寧(フォン・シャオニン)監督が、実は私のデビュー作『紫日』(2001)の監督で、今回の企画をお聞きした時は、ご縁を感じました。中国では“戦争三部作”と言われる作品で有名な方で、その一本が「紫日」なんです。そんな映画出身の監督とあって、物語は、朱元璋が成長していく過程が丁寧に描かれていながら、一話一話もしっかりまとまっていて、おもしろかったです。
Q:監督とは、いまでも交流があるのですか?
前田:昨年の東京国際映画祭でたまたま再会して、いろいろお話をさせていただきました。そういえば「〜朱元璋」の冒頭、宴会シーンの王妃は、監督作品の常連女優なんです。朱元璋の夫人・馬皇后を演じた劇雪(チュイ・シュエ)も、母性と芯の強さを感じさせるすてきな女優ですよね。
Q:「〜朱元璋」で、監督らしいなぁと思われた点はありますか?
前田:ありました! 監督の作品は、エキストラにスタッフの方がよく参加されているんで。たまに、セリフのある役を演じることもあって、みなさん俳優としても鍛えられているんです(笑)。この前も観ていたら、『紫日』のロケ一緒に内モンゴルまで移動した美術さんが兵士役で出演されていましたし。あの時のチームのまま、いまでも撮影されているんだと思うと、とても懐かしくなります。
Q:キャストで、気になる方はいますか?
前田:朱元璋役の胡軍(フー・ジュン)の存在感が際立っていて、彼の魅力が全面に出ていました。勇敢なだけじゃなくて、破天荒な面もしっかり演じられていて、すごく、かっこよかったです。『レッドクリフ』で趙雲を演じられた時はシャープな印象でしたけど、「〜朱元璋」では、とても貫禄が増していたと思います。こんなに雰囲気の違う武将を表現できる演技力は、本当にすごいです。
Q:見どころはいろいろあると思いますが、印象に残ったシーンは?
前田:本編で“酒盛り”のシーンが度々描かれていますけど、そこでの朱元璋の食べっぷりや飲みっぷりの良さにビックリしました! みんなすぐ酔い潰れてしまう中、ひとり平然と飲み食いを続けているんです。“本当に強い人は、お酒にも強い”というか、朱元璋という人物の豪快な気質が感じ取れて、印象的でした。
Q:そんな豪快な朱元璋について、作品を通してどう感じられました?
前田:“自分”をしっかりと持っている人ですね。それでいて師匠や仲間、家族との関係をすごく大切にしている。そこに人間的な魅力を感じました。私の中国の友達もみんな、そういうところを大事にされます。「〜朱元璋」には、中国で脈々と受け継がれる良心が詰まっていると思います。
Q:ほかに、気になった人物はいますか?
前田:朱元璋を常に補佐する李善長が、いい味を出していました。歴史ドラマには頂点に立つ人物を、頭脳で支える彼のような存在が必要不可欠なんだなと実感させられました。あとは郭天叙ですね。次々と卑怯な手段で朱元璋を陥れようとするんですけど、朱元璋はそれに真正面から挑むという構図がおもしろいですよね。彼のような役がいて、朱元璋の活躍がより際立ったものに見えると思います。 「〜朱元璋」は、主人公を支える人物、対立する人物モしっかり描かれています。だからこそ、物語の世界に入り込み易いのだと感じました。完璧なだけじゃなく、内面に問題を抱えた人物たちが支えあい衝突したりしてこそ、ドラマが生まれ、感動するんだと思います。そんな広く深い人間関係にも注目して楽しんで欲しいですね。 。
――次回は、公開中の話題作『大秦帝国』をはじめ、中華歴史ドラマ列伝シリーズ最新作について伺いたいと思います。乞うご期待ください!!