第41回:けっこう腹黒い!? 「三国志」蜀の武将たちの意外な一面に迫る

文:中国エトセトラ編集部

良く言えば、危機を察する力があったということ? そのサバイブ力で時間を賭して(犠牲も?)のし上がった劉備。

「部下の手柄は自分の手柄。自分の失敗は部下の失敗」と、自身を生き残らせる術を熟知していたとも言える?諸葛亮。

プライドの高さと、諸葛亮との微妙な関係が、怒りを秘めていった関羽の運命を少しずつ変えていったのかも。

何もかも気に入らない!と暴れまくった結果、蜀入りしか生き残る術はなしという状況を、馬超は作ってしまったのか…。

「三国志演義」で主人公として描かれているため、"正義"のイメージが定着している劉備たち蜀の面々。しかし、一人一人の行動を詳しく見てみると、意外とあくどい一面があることにも気付かされます。そこで今回は、蜀の武将たちのちょっと気になる側面を、クローズアップして大紹介! これを読んだら「三国志」の見方が変わってしまうかも!?


劉備...実は三国一の無責任男?

行く先々で争いに巻き込まれたり、貧困に喘ぐ民衆と寝食を共にしたりしながら、長い放浪生活の末に蜀の君主となった劉備。その生きざまや民を第一に思う人柄から"仁君"と評されることが多いですが、実際のところ、彼が放浪生活を余儀なくされたのは、雇い主が危機に陥ったら一目散に逃げ出し、よその国でうまそうな儲け話があれば、今の仕事を投げ捨てて飛びついてしまう、その性格に問題があったからのようです。また、いろいろと世話になった曹操に平気で反旗を翻したり、逃げるときは妻子を顧みず自分だけさっさと安全圏に脱出してしまうなど、なかなかの小悪党ぶりも発揮しています。「演義」では、汚れ仕事は諸葛亮や張飛が引き受けていますが、実際のところは、劉備自身もかなりの悪事に手を染めているみたいです。


諸葛亮...人事管理能力に問題あり!

諸葛亮といえば、劉備亡き後の蜀の中心的人物であり、魏と雌雄を決するため、5回に渡って北伐を繰り返したことでも有名です。しかし、この北伐ですが、蜀の国力を大幅に低下させただけで、特に目立った功績を残せていません。そうなると当然、民衆からは不満の声が出てくるわけですが、諸葛亮は弟子の馬謖(ばしょく)や同僚の李厳(りげん)を戦犯に仕立て上げて、自分に責任が及ぶ事態をことごとく回避しています。さらに「顔が気に入らない」という理由で、猛将・魏延(ぎえん)の適切な献策をことごとく無視し、勝利の機会を逃すなど、前線指揮官としての才能には疑問符を付けざるを得ません。こうして見てみると、自分の息がかかった人材を重要なポジションに抜擢して、「うまくいったら自分のおかげ、失敗したら部下の責任」という、けっこうえげつない人事を行っていたことが分かります。


関羽...プライドの高さが命取りに

「部下には優しいが、目上の者には尊大だった」と言われる関羽は、自他共に認める劉備軍の№2。ところが、諸葛亮が加入した頃から、彼の立ち位置は微妙になります。劉備を筆頭に、張飛や趙雲たちが諸葛亮の知略を絶賛し始め、いつの間にか「諸葛亮こそ劉備軍の№2」と称えるようになっていたのです。プライドの高い関羽はこれが我慢ならず、何かにつけ諸葛亮に難癖をつけるのですが、結果として、これが彼自身の首を絞めることになってしまいます。諸葛亮の提案で、彼は"要所・荊州の防衛"という名誉ある職務を与えられるのですが、その間に他の武将は、こぞって益州攻略に乗り出してしまいます。つまり、怒りを静めるためにヨイショされて、置いてけぼりを食らってしまったわけです。そんな関羽をよそに、益州では黄忠や馬超など新たな有力武将が続々加入し、劉備軍はいつの間にか大所帯に。ますます居場所がなくなった関羽は、なんとか存在感をアピールしようとあれこれ考えているうちに、魏・呉の連合軍に攻め込まれ、あえなく殺されてしまうのでした。


馬超...思い込みで曹操を襲撃

蜀加入のタイミングは遅めながら、「三国志」ファンの間では高い人気を誇る馬超。父・馬騰(ばとう)の仇を討つため、宿敵・曹操に幾度となく戦いを挑む姿が美談として語られていますが、実は先に手を出したのは馬超の方でした。しかもその理由は「どうも曹操は信用ならない」という、かなり身勝手な思い込みが原因だそうです。ちなみに戦いの合間には、和睦の機会もちらほらとあったものの、馬超はこれらをすべて一蹴! あろうことか会談の席で曹操に斬りかかるなど、礼を欠いた狂犬ぶりも披露しています。さらにその後、曹操の仕掛けた離間策にハマり、長らくいっしょに戦ってきた仲間をあっさり斬り捨ててしまいます。こうして全てを失った末に、劉備と運命的な出会いを果たすのですが、彼の破天荒な生きざまを見ていると、あの呂布と通じるところがちらほらと目につきます。もし劉備軍入りしていなければ、ここまでの人気武将にはならなかったかも!?


今回ご紹介した内容は、あくまでも予想に基づく人物紹介ですので、「物語の一つの見方」として受け取ってもらえると幸いです。とはいえ、このように"劉備=正義""曹操=悪"といった固定観念にとらわれずに「三国志」関連の書籍やドラマを見るように心がければ、これまでにない「新たな人物の捉え方」が出来るようになるかもしれませんよ!