第6回 中華歴史ドラマ列伝で学べる 中国発祥の格言大紹介! 文:中国エトセトラ編集部


 「四面楚歌」「臥薪嘗胆」「傍若無人」「国士無双」…など、みなさんがご存知の故事・熟語は、結構、中国の歴史書の中からの言葉が多いです。当然、今回の中国歴史ドラマ列伝に登城する人物たちが生み出したものもあります。その例を挙げてみると、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という言葉は、後漢時代の武将・班超(はんちょう)が、敵の大軍と戦うことに怯えてしまった部下たちに向かい言い放った言葉が語源だったそうです。この班超という人物は「シルクロード英雄伝」に登場する“飛駝(フェイト)商隊”の創始者として、名前だけですが本編にも登場しています。
また、歴史大作「大敦煌」の第一部<西夏来襲>の舞台である北宋の時代には、数多くの書物が編纂されました。その中の一つ碧巌集(へきがんしゅう)には、当時盛んだった禅宗の僧侶・陳尊者(ちんとうしゃ)が残した「竜頭蛇尾」という言葉が記されています。

今回は、これらの時代に作られ、現在の日本でも広く使われている有名な格言を何点かピックアップし、ご紹介していきたいと思います。

後漢の武将・班超(はんちょう)が残した言葉。虎の子供(貴重なものの例え)を手に入れるには、虎の住む穴に入るような危険を冒さねばならないという例えから、「大きな成果をあげるには、思い切った行動をとらなければいけない」という意味に転じた。この言葉により班超の部下たちは士気を高め、寡兵ながら敵の大軍を見事に打ち負かしたという。

北宋の禅僧・陳尊者(ちんとうしゃ)が、ある僧と禅問答をした時のこと。相手は最初こそ威勢が良かったものの、徐々に口数が減ってゆき、最後には黙り込んでしまった。これを見た彼が「自分を竜のように強く見せているが、尻尾は蛇のような男だ」と言ったことから「勢いがよいのは最初だけで、最後にはなくなってしまう」ことの例えとなった。

戦国時代。強大な秦(しん)を前に、服従か抗戦かで迷っていた韓(かん)の王に向かって、蘇秦(そしん)という遊説家が説いた言葉。「大きなものに従って軽んじられるよりも、小さな組織でも長となって重んじられる方が良い」という意味。この言葉により、韓は徹底抗戦を決断。他国と同盟を結び、秦に対抗したと言う。

前漢の将軍・趙充国(ちょうじゅうこく)が、皇帝より匈奴討伐を命じられた時に答えた言葉。「あれこれ憶測で計画を企てるよりも、実際に現地を見て作戦を立てた方が確実です」と言ったことから「人から何度も聞くより、一度自分の目で見る方が確かであり、物事がよく分かる」という意味に転じた。

こうして読み返してみると、どの言葉も現在のビジネス用語として使えるものばかりで驚かされてしまいます。この他にも、おもしろい諺や四字熟語は、まだまだたくさんあるので、また機会をみてご紹介していきたいと思います。


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「シルクロード英雄伝」
「シルクロード英雄伝」

「大敦煌<西夏来襲>」
「大敦煌<西夏来襲>

後漢書:ごかんじょ
(後漢書:ごかんじょ)
宋の時代、歴史家の范曄(はんよう)によって編纂。後漢王朝の歴史について記されている

(碧巌集:へきがんしゅう
(碧巌集:へきがんしゅう)
北宋時代、圜悟克勤(えんごこくごん)により編纂された仏教書。臨済宗において重宝されている

戦国策:せんごくさく
(戦国策:せんごくさく)
前漢の学者・劉向(りゅうきょう)が、戦国時代のさまざまな逸話を国別にまとめた書物

漢書:かんじょ
(漢書:かんじょ)
後漢時代、女性歴史家・班昭(はんしょう)らにより編纂された、前漢について記した歴史書

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